介入効果とは何ですか?
前回の記事では、因果分析の基本概念として「反実仮想」について解説しました。
ある処置(施策)による効果を明らかにするには、処置を受けた場合と受けなかった場合の結果を比較する必要があります。そのためには、適切な介入(処置)を行い、その効果を測定することが不可欠になります。
因果分析において、介入の設計と効果の測定は非常に重要なポイントとなります。本記事では、介入の具体的な方法や留意点、そして主婦の事例を通じて効果の定量化の仕方を解説していきます。
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因果推論における介入とは?
介入:観察対象に対して意図的に働きかける操作のこと
例えば、ある企業がWebサイトにバナー広告を掲載したとしましょう。この時、広告を見た主婦を「処置群」、見ていない主婦を「統制群」として設定することができます。
つまり、企業が意図的にバナー広告を掲載したことが「介入」に当たるのです。
このように、介入によって処置群と統制群を設定することで、処置を受けた場合と受けない場合の結果を比較することができます。その差が、ある処置(施策)の効果を表すことになります。
因果分析では、こうした介入を行って効果を測定することが重要です。
単に2つの変数の相関関係を見るだけでは、因果関係を特定することはできません。適切な介入設計と、その効果の定量化が因果分析の本来の目的なのです。
介入の方法と留意点
因果分析における介入には、主に2つの方法があります。
ランダム化比較試験(RCT)
処置群と統制群をランダムに割り当てる手法です。ランダム化により、両群の特性が均等になるため、介入の効果を明確に特定できるのが特徴です。
例えば、先ほどのバナー広告の例でいえば、企業がWebサイトの訪問者をランダムに処置群と統制群に割り当てることで、広告の効果を正確に測定できるでしょう。
擬似実験
自然に発生した処置を利用する手法です。ランダム化は難しいものの、統計的な手法を用いることで、介入の効果を推定することができます。
バナー広告の例だと、広告を掲載した地域と掲載していない地域の主婦を比較するといったアプローチが考えられます。
ただし、介入を行う際には、倫理的な配慮も必要になります。被験者の自由意志を侵害したり、有害な影響を及ぼす可能性がないかなど、慎重な検討が求められます。
このように、介入の方法と効果測定、そして倫理面の検討が、因果分析における重要なポイントなのです。
主婦の例で見る介入の効果
ここまで、因果分析における介入の概要について解説してきました。では、実際に主婦の事例を用いて、介入の効果をどのように定量化すればよいでしょうか。
先ほどの例を引き続き使うと、企業がWebサイトにバナー広告を掲載した場合を考えることができます。
ここで、交絡因子について説明させていただきます。交絡因子とは、原因変数と結果変数の関係に影響を与える第三の変数のことを指します。この主婦の事例では、主婦の属性が交絡因子として働いています。
介入前のグラフを見ると、主婦の属性が「ネット広告の視聴」と「特売品の購入意向」の両方に影響を与えていることがわかります。つまり、主婦の属性が原因変数と結果変数の関係を歪めてしまっているのです。
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グラフの書き方は【Graphvizで簡単にネットワーク図を視覚化!】のブログを参考に‼
このように、交絡因子が存在すると、ネット広告の効果を正しく評価できません。交絡因子の影響を取り除かなければ、因果関係を特定することはできないのです。
では、どうやって交絡因子の影響を取り除けばよいのでしょうか。
適切な介入を行うことが、交絡因子の影響を排除する鍵となります。
先ほど説明したように、RCTではランダム化によって処置群と統制群の特性を均等にし、擬似実験では統計的手法を用いて交絡因子の影響を取り除くことができます。介入によって交絡因子の影響を除去することで、ネット広告の直接的な効果を定量的に評価できるようになるのです。
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では、実際に主婦の事例を用いて、介入の効果をどのように定量化すればよいでしょうか。
ここで、処置群を「ネット広告を見て来店した主婦」、統制群を「ネット広告を見ていない主婦」とすると、以下のような結果が得られたとしましょう。
ネット広告を見て来店した主婦 | ネット広告を見ていない主婦 | 差 | |
---|---|---|---|
実際の結果 | 特売品を買った割合 70% | 特売品を買った割合 60% | ATE 10% |
仮定の結果 | 特売品を買った可能性 65% | 特売品を買った可能性 62% | ATT 3% |
差 | ATT 5% | ATU -2% | ATU -2% |
この表から読み取れるのは以下の点です。
- ATEは10%。ネット広告を見た主婦は見ていない主婦に比べて10%多く購入した。
- ATTは5%。実際にネット広告を見た主婦の効果は5%だった。
- ATUはー2%。仮にネット広告を見ていた場合、見ていない主婦の効果は-2%だった。
このように、介入の効果をATE、ATT、ATUという指標で定量的に分析できるのが因果分析の特徴です。
ここで重要なのは、ATTとATUの差が生まれることです。
ATT(Average Treatment Effect on the Treated)は、実際に処置を受けた群の効果を表しています。一方、ATU(Average Treatment Effect on the Untreated)は、処置を受けなかった群に仮に処置を行った場合の効果を示しています。
この2つの指標に差が生まれるのは、主婦の属性が交絡因子として働いていたためです。
介入前は、主婦の属性が「ネット広告の視聴」と「特売品の購入意向」の両方に影響を与えていました。つまり、主婦の属性が原因変数と結果変数の関係を歪めていたのです。
しかし、適切な介入を行うことで、この主婦の属性の影響が排除されました。その結果、処置群と統制群の特性が均等になり、ネット広告の直接的な効果をATTとATUという指標で捉えることができたのです。
つまり、ATTとATUの差は、介入によって交絡因子の影響が取り除かれたことを示しているのです。この差を分析することで、真の因果関係を特定することができるのが、因果分析の特徴となります。
分かりやすく介入効果を知る
因果分析において、介入(処置)の設計と効果の測定は非常に重要なポイントです。
適切な介入を行うことで、処置を受けた場合と受けない場合の結果を比較し、ある施策の効果を明らかにできるのです。
本記事では、介入の具体的な方法であるRCTと擬似実験、そして主婦の事例を通じた効果の定量化について解説しました。課題解決に向けた意思決定には、このような因果分析の知見が不可欠といえるでしょう。
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